スニーカー

スニーカーを履く男女

赤札の魔力と「あえて外す」という甘い罠

ショッピングモールの広大な通路を歩いていた時、ふと立ち寄ったシューズショップの店頭ワゴンに目が留まりました。
そこには、「50%OFF」という魅力的な赤いシールが貼られた、有名ブランドのハイテクスニーカー。

普段の私なら素通りするような、ソールが分厚く、未来的でゴツゴツとしたデザインの、いわゆる「ダッドスニーカー」と呼ばれるタイプです。
しかし、半額以下という圧倒的なお得感と、雑誌で頻繁に見かけるトレンドアイテムであるという事実が、私の理性を揺さぶりました。

恐る恐る試し履きをしてみると、見た目の重厚感とは裏腹にクッション性が良く、歩きやすさに驚きました。

鏡の前で悩んでいると、店員さんが悪魔の囁きをしてきます。
「今はきれいめなワンピースやスカートに、こういうボリュームのある靴を合わせて『あえて外す』のがおしゃれなんですよ」。

その言葉を聞いて、私の脳内には勝手におしゃれなコーディネートの妄想が広がりました。
これを履くだけで、いつもの無難なファッションが一気に今っぽくアップデートされるかもしれない。

そんな淡い期待と、今買わないと損をするという焦燥感に背中を押され、私はそのスニーカーを購入しました。

玄関で繰り広げられた一人ファッションショーの絶望

ウキウキした気分で帰宅し、さっそく手持ちの服と合わせてみることにしました。

クローゼットを開け、お気に入りの花柄スカートや、仕事でも使っているテーパードパンツ、シンプルなニットワンピなどを次々と取り出します。

しかし、玄関の全身鏡の前に立つたびに、私の表情は曇っていきました。

何かがおかしいのです。
店員さんは「外すのがおしゃれ」と言っていましたが、私がやると「間違えている」ようにしか見えません。

私のワードローブは基本的に、オフィスカジュアルを意識したデザインのものが中心です。
そこに突然、宇宙船のような巨大なスニーカーが足元に来ることで、まるで足だけガンダムのような異様なバランスになってしまったのです。

足首の細いパンツに合わせれば足の巨大さが強調されてピエロのように見え、フレアスカートに合わせれば野暮ったい印象になり、どうしても雑誌で見たような「抜け感」が出せません。

私の身長でボリュームのある靴を履くと、重心が下に下がりすぎてスタイルが悪く見えるという事実にも、この時初めて気づきました。

トレンドアイテム導入時に守るべき「3つのルール」

このような失敗を防ぐために、私がその後徹底しているルールがあります。

まず一つ目は、「試着室では必ず遠くから全身鏡を見る」ことです。
足元のアップだけ見ているとデザインの可愛さに目がくらみますが、3メートルほど離れて全身のバランスを見ると、自分の体型に対して靴のボリュームが適切かどうかを客観的に判断できます。

特にボリュームスニーカーのような主張の強いアイテムは、身長や足の太さとのバランスが非常に重要です。

二つ目は、「手持ちの服で3パターン以上のコーディネートが組めるか想像する」ことです。
購入を決める前に、自分のクローゼットの中身を思い浮かべ、具体的に3通りの合わせ方が思い浮かばなければ、そのアイテムは買うべきではありません。

「この靴のために新しい服を買わなければならない」という思考になった時点で、それは今の自分には不要なものです。

そして三つ目は、店員さんの「外す」「あえて」という言葉を鵜呑みにしないこと。
それは高度なテクニックであり、初心者が安易に手を出すと大怪我をします。

まずは自分の系統に合った王道のアイテムを選ぶことが、結局は一番の節約であり、おしゃれへの近道なのだと学びました。